生け捕りの妖精
ここは、名の知れてる大きな街…
この街の美術館にて、世にも珍しい展示物がお披露目されたという話を聞き、青年は何とか無事に入場券を手にし、無事に入る事が出来た。
中に入ると、噂の展示物が展示されてるらしい場所は沢山の人が溢れていた………。
世にも珍しい展示物…
一体どんな作品なのだろう…?
美術系の作品に興味を持っていた青年は少なからずわくわくしていた。
長蛇の列を並び続けて、ようやく展示物の入り口手前まで辿り着いた。
少なからず、回りの人達の異様な雰囲気に違和感を覚えながらも…
いよいよ、次の警備の解除で見られる…青年は内心とても楽しみだった。
警備が解除され、前の列が動き青年が特別展示場内に入ると、沢山の人だかりが出来ててその美術品の前に目を止めていた。
その沢山の人だかりをかき分けてようやく美術品の前に立つと、そこには異常な雰囲気を青年は目の当たりにした…。
「んっ…」
「んんっ…」
大きな額縁の中に身包みを全て剥がされた二人の妖精の少女が磔にされていた…
体は縄で拘束され、二人の妖精は沢山の人だかりの中、二人の妖精の股の間からは液体が垂れ落ち続けてる状態で互いに舌を絡ませ合っていた…。
その展示物のタイトルには「愛し合う妖精」と書かれていた。
「あらあら、ほんと、はしたないわね…」
「ふふ、あんなにヨダレを垂らして…」
「くくく、何て実にやらしい妖精だ…」
この異常な展示物の前でギャラリー達は、顔をにやつかせながら見ていた。
「ひどい…何でこんな………」
生け捕りにされ、正常さを失った妖精を性的な見世物として展示してる………
そのあまりの異常な光景に青年は言葉を失っていた…。
「うっ!?」
青年は気分が悪くなり、口元を抑えながら逃げるようにその場を後にした…。
「あらあら、もう帰るのかい?」
「こんな素晴らしい美術品を楽しめないなんてね…」
「ははは、ほんと、勿体無いねぇ…」
青年の後ろ姿を見ながら、その場にいた皆が顔をにやつかせながら話していた………。
混沌とした時代、各国の美術館にて性的な見世物として展示する為に生きたまま妖精を捕らえ、約一ヶ月程薬漬けの後美術品として晒したという………
約一ヶ月の展示という名の晒しの後、生け捕りにされた妖精達のその後を知る者はいない………。
この残酷な制度が廃止されたのはそれから大分後の話だった…………………。